【2025年12月号】樹齢80年の老叢アッサム紅茶から見た、台湾紅茶の100年
- Pin-chun Lin

- 3 日前
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日本人が築いた、台湾紅茶100年の歩み
2025年、台湾紅茶は誕生からちょうど100年という節目を迎えます。
この記念すべき年に、台湾茶業界ではこれまでの研究成果を総括し、未来への展望を語るシンポジウムが開かれるなど、改めて台湾紅茶の歩みと意義に注目が集まっています。
台湾紅茶の起源は1925年にさかのぼる。
当時、日本統治下にあった台湾で、三井合名会社がインド・アッサム地方からアッサム種の茶樹を導入し、南投県魚池地域(現在の日月潭一帯)で試験栽培に成功。政府は民間による紅茶生産への投資を奨励し、魚池と埔里は台湾紅茶の中心産地として発展。「紅茶の故郷」としてその名を広めました。

1920年代、日本人は魚池郷の気候や土壌がインド・アッサム地方に似ていることを見抜き、アッサム茶樹の栽培を開始。 台湾は北回帰線が島の中央を横断し、南は熱帯、北は亜熱帯に属しています。九州ほどの小さな島ながら、標高3,000メートルを超える山が258もそびえ、温帯に近い気候帯まで備えているという。この多様な自然環境が、アッサム種(大葉種)から中国種(小葉種)まで、幅広い茶樹栽培も可能に。
こうした環境の中で栽培と改良が進められ、落ち着いたコクと甘み、モルティー(麦芽様)の香りに黒糖やカラメルのような余韻をもつ紅茶が生まれました。
これが後に「日月潭紅茶」として世界に知られるようになった。
1928年、三井合名会社は「Formosa Black Tea」をロンドンやニューヨーク、さらにオーストラリアへ輸出し、高い評価を得た。この成功をきっかけに多くの製茶工場が台湾に進出し、「日東紅茶(Nittoh)」もこの時期に誕生している。当時の台湾は日本領であったため、台湾産紅茶は「日本産」として世界に広まった。

1936年には魚池紅茶試験支所が設立され、アッサム種の栽培研究や製茶技術の改良、品種育成が本格化した。日月潭近くにはセイロン式の紅茶工場が建設され、1938年には製茶実験工場も増設。魚池は台湾紅茶研究の中核拠点となった。

1937年には紅茶の年間生産量が644万キロ、輸出量は580万キロに達し、日本統治時代の最高記録を樹立する。しかし、第二次世界大戦の勃発により輸出は急減した。
戦前は条形茶(リーフタイプ)が主流だったが、戦後は国際市場の需要に合わせ、インドやスリランカに倣ってCTCなどブロークンタイプの製造が始まった。1940〜1960年代にかけて台湾紅茶産業は外貨獲得の主力として最盛期を迎え、魚池(大葉種)や新竹(小葉種)など各地で紅茶の大規模生産が行われ、当時は世界80以上の港へ輸出されていた。
しかし1960年代以降、国際市場では低コストなスリランカやインド産紅茶が台頭し、台湾紅茶は次第に競争力を失っていった。台湾の茶業は紅茶から緑茶へと転換を進め、国内販売に重心を移したが、烏龍茶を好む台湾の嗜好文化の中で紅茶はあまり受け入れられず、一時は市場から姿を消してしまった。
転機が訪れたのは1999年。 この年、日月潭紅茶を代表する「紅玉(台茶18号)」が正式に登録・命名された。紅玉は、茶業改良場が50年以上にわたり育種を重ねてきた結晶であり、現在では台湾紅茶の象徴として国際的にも高く評価されている。

2000年代に入ると、日月潭紅茶の品質と知名度は一層高まり、国内外の評価も上昇。日月潭の人気を背景に、夏季(烏龍茶の品質が低下する時期)の茶葉を活用した小葉種紅茶の製造も各地で盛んになり、金萱紅茶・阿里山紅茶・梨山紅茶など、新たな台湾紅茶の多様な系譜が次々に生まれていった。
今日では、紅茶は若い世代にも親しまれ、ティースタンドでは多彩な品種やアレンジティーが並ぶ。 そして、日月潭の茶畑には今も100年前に日本人が植えたアッサム茶樹が生き続け、毎年新しい芽を吹き、紅茶として製茶されている。
100年前、日本人が蒔いた一粒の種は、今や多様な品種と製茶技法へと花開き、台湾紅茶の豊かな文化と香りの礎を築いている。

2025年の最終号には、これまでの多くのご購読への感謝を込め、特別に上質なプレミアム茶をご用意いたしました。
莊記茶業︎の莊鎔璞氏は、連続8年にわたり日月潭紅茶品評会で第一位(特等奨)を受賞した名製茶師。
今回は、近代の日月潭を代表するミントやシナモンのような香りをもつ独特な風味の台茶18号「紅玉紅茶」ではなく、樹齢80年を超える日月潭老叢アッサム紅茶を皆様に紹介します。樹齢が数百年以上の茶の木は、「古樹」と呼ばれるが、100年未満のため「老叢(欉)」と呼びます。
日月潭随一の製茶師が、最も樹齢の長い茶樹から仕上げたアッサム紅茶。その一杯は、従来のアッサム紅茶とは一線を画す、特別な体験となる。



時代が移り変わっても、かつて台湾に渡った日本人が植えたアッサム種の茶樹は、今もなお生命力旺盛に毎年新しい芽を吹き出し、今の台湾人、そして次の世代の台湾人にその味を届けている。

台湾茶の背景や歴史をより詳しく知りたい方には、リンの著書『台湾茶の教科書 現地のエキスパートが教える本場の知識』がおすすめです。
現地取材をもとに、台湾茶の産地・品種・製法・文化を網羅した一冊。
次の台湾旅行では、より深く、香り豊かな台湾茶を味わってみてください。
12月号スペシャルプレゼント
2021年に創刊した「ちょっと台湾」は、2026年1月より内容と発送頻度をリニューアルし、より充実した「台湾茶通信」として生まれ変わります。
日頃のご愛読に感謝し、2025年12月号ではプレミアム仕様の老叢アッサム紅茶だけでなく、特別プレゼントもご用意しました。
12月号をCプランでご購入の方に、話題の「橙茶」3gを1袋プレゼントいたします(ご購入の12月号と同梱)。
A・Bプランには付属いたしませんので、ぜひCプランをご検討ください。
また、11月号までサブスクご登録済みで、12月号も継続される方全員(プラン不問)にも「橙茶」3gを12月号と同梱して1袋お届けします。
2024年に発表、最近話題の「橙茶」(チェンチャ)とは?
橙茶とは、2024年に発表された、白茶より改良した作り方。

爽やかな白茶の製法をさらに改良し、2024年に「橙茶」という新たなカテゴリーが発表されました。
農業部茶及び飲料作物改良場(旧・茶業改良場)がが発表した橙茶の作り方は、茶摘み → 長時間萎凋(静置48時間、萎凋率45%) → 軽く炒菁(80°C、3分間) → 揉捻→ 自然乾燥(24時間、発酵も同時に進む)→ 乾燥(100°Cに10分間、その後70°Cに3時間)であるが、製茶師によって撹拌を伴った製茶工程も見られます。
揉捻を行うため白茶ほど淡麗ではなく、加熱で発酵がある程度抑えられることで、熟成による風味変化が大きい白茶に比べ安定した味わいとなる点が特徴です。現在は試作段階にあり、各産地で消費者の反応を見ながら製法が調整されている最中で、定義や特徴はまだ確立途上にあります。それでも白茶人気の高まりとともに注目度が上がり、問い合わせも増えているので、是非皆様もこの最初の段階から試飲に参加したらこれからの変化も理解できるようになるでしょう。
橙茶の萎凋時間は24〜48時間と長く、茶葉の触感を確かめながら手作業で撹拌し、水分と柔らかさが均一になるよう調整します。その後、軽い釜炒りで青臭い匂いを取り除き、軽い揉捻して整形、24時間の自然乾燥を経て仕上げる。製造には合計3日を要し、長時間萎凋と自然乾燥によって果実香が引き出され、揉捻によって安定したまろやかな茶湯が得られる。
現時点で広く知られている橙茶としては、三峡特有の品種「青心柑仔」を用いた「三峡白美人」と桃園・龍潭地域の「雪美人茶」があります。白毫が残る外観から名付けられたもので、品評会一等受賞茶の茶湯はとろみがあり、明るい橙紅色を呈し、バラの華やかな香りに加え、ライチ、桃、バナナ、熟梅のような果実香、ウンカに噛まれた茶葉を原料として製茶したらさらに蜂蜜を思わせる甘い芳香が立ち上がる。
また、台湾原生種で紅茶・白茶に適性を持つ山茶(Camellia formosensis)を用いた橙茶も生産されており、山茶特有の香りが際立ちます。製茶師の間では「白茶と紅茶の中間」と表現されることが多く、最初はちょっと理解できなかったが、何種類か飲んでみたらなんとなくその気もします。
今回お届けするプレゼント茶は、台茶20号「迎香」(詳細は11月号参照)を用い、南投県名間郷で製造された橙茶である。

超レアなため、今回も数量限定でのご案内となります。
【月1の台湾茶通信】「ちょっと台湾」2025年12月号、応募受付開始!

・台湾茶|莊鎔璞氏(莊記茶業︎)の老叢アッサム紅茶
日本人が台湾・日月潭にて初めてアッサム種の茶樹の種を播いたのは、ちょうど今から100年前の、1925年の出来事であり、ここから日月潭紅茶を起点とする台湾紅茶の百年史が幕を開けた。この黄金期の歩みを辿るように読み進めながら、樹齢80年以上を数える老欉アッサム紅茶を味わう。
製茶してくれたのは、連続8年にわたり日月潭紅茶品評会で第一位(特等奨)を受賞した名製茶師、莊鎔璞氏(莊記茶業︎)。日月潭最強の製茶師と最古のアッサム茶の木で作られたレアな紅茶です。
産地:南投県魚池郷日月潭
生産者:莊記茶業 製茶師莊鎔璞


・茶菓子|嘉義方塊酥
嘉義方塊酥は嘉義を代表する手土産で、1950〜60年代に地元の菓子職人が生み出した。日本統治時代に伝わった製菓技術と、戦後の西洋菓子ブームを背景に、中華菓子の製法にバターや小麦粉の層づくりを取り入れ、軽やかでほろりと崩れる立方体の菓子として発展した。
メーカー:莊家錦泰昌食品有限公司
原材料名:小麦粉、砂糖、植物油、塩

ちょっと台湾|セット内容
A.今月の台湾茶(3回分)+月刊誌 NT$270
B.今月の台湾茶(1回分)+茶菓子(1回分)+月刊誌 NT$270
C.今月の台湾茶(3回分)+茶菓子(3回分)+月刊誌 NT$370
■税込・送料込
■今月号の月刊誌付き(台湾茶紹介、産地のストーリー、豆知識やレシピ、淹れ方動画QRコード、台湾音楽プレイリストなどが掲載)
★応募締め切り:11月20日まで
★期間・数量限定(先着150セット)
★11/30までに発送、12月上旬に日本のおうちに届く予定
応募専用ページ:
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【2025春新茶・有機認証茶】







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