6月/7月/8月 夏の特集
『香片、文山包種茶、そして高山茶へ 香り高い台湾茶の歴史を読み解く。』
台湾の香り高い高山茶は、実はジャスミンで着香させたあの「香片」から生まれたのを知っているだろうか。
今回の特集では、時代ごとに起こった台湾茶の“革新”をたどりながら、その時代に生まれたお茶を実際に飲み比べていく。
台湾茶の歴史は1880年代にさかのぼる。福建省で作られていた香片(薫花包種茶)は海を越えて台湾へ渡り、東南アジアへ大量に輸出される主要産業となった。
やがて1912年、花を加えずとも花のような香りを引き出す製法が確立される。これが文山包種茶の誕生であり、台湾茶における最初の大きな革新だった。「花のような香り」を持つお茶は、この頃から包種茶と呼ばれるようになる。
その後、1940年代には茶葉を丸める製法が生まれ、1970年代には機械化によって生産量が飛躍的に向上する。凍頂烏龍茶を経て、包種茶の製法と球形加工が融合し、清らかで華やかな香りをもつ“清香タイプ”が確立されていった。1990年代には高山茶ブームが訪れ、台湾茶の主流となる。
高山茶といえば阿里山がよく知られるが、やがて人々はさらに高い標高を求め、ついには標高2600mに達する大禹嶺まで茶園が広がった。希少性の高さから市場価格は上昇し、その価値ゆえに様々な課題も生まれている。一方で近年は、高海抜だけが価値ではないという認識も広がりつつある。阿里山は「高山茶都」として再評価され、品質・価格ともにバランスの取れた産地として注目を集めている。
現在、包種茶は大きく二つの形に分かれる。北台湾で作られる条形の文山包種茶、そして高山茶に代表される球形包種茶。なかでも最大の生産地は南投名間であり、四季春茶は日常のドリンクとして広く親しまれている。近年では、その生産環境を守る動きも活発になっている。
今回のラインナップは、この流れを体感できる構成であり、創業100年以上の老舗が手がける香片から始まり、坪林のコンテストで評価された文山包種茶で基準となる味わいを知る。阿里山では金萱種のやわらかな花香と、冷めるにつれて現れる自然なミルキーな甘みを楽しみたい。香料ではなく、茶葉と製茶技術によって生まれる香りの妙がそこにある。
さらに希少な大禹嶺では、高海抜ならではの清涼感と透明な余韻を感じることができるだろう。まるで原始林の中にいるかのような感覚を想像しながら味わってほしい。最後は四季春茶。少し多めに用意した茶葉で、日常に広がる台湾茶の楽しみ方を提案する。ドリンクとしてのアレンジも含め、手を動かしながら味わう時間になるはずだ。