【2025年9月号】秋摘みの三峡白茶と桂圓核桃糕
- Pin-chun Lin
- 8月5日
- 読了時間: 5分

涼やかに、奥深く。いま注目の「台湾白茶」とは?
台湾茶の世界に、またひとつ新たな風が吹いている。
発酵度が低く、淡く透き通るような水色、やさしい味わいで注目を集める「白茶」。もともと中国で親しまれてきたこのお茶が、今、台湾の個性をまとって新たなブームとなっている。
渋くない、刺激が少ない。いまの時代に合ったお茶
白茶の魅力は、まずその「やさしさ」にある。
発酵度が低く、カフェインの含有量も少ないため、胃にやさしく、夜でも安心して楽しめる。しかも、長時間お湯に浸けても渋くなりにくいため、オフィスでもマグカップひとつで何度もお湯を注いで楽しめる、という手軽さも人気の理由。
特に、20代〜30代の若い世代を中心にファンが増えており、自然志向・健康志向の高まりとも重なって静かなブームとなっている。

中医学の考えでは「涼性」に分類される白茶は、体内の熱を冷ます働きがあるとされ、蒸し暑い残暑にもぴったり。さらに、揉捻の工程がなく、自然乾燥で仕上げる製法により、保存するほどに香りと味わいに変化が生まれるのも特徴だ。
台湾白茶の意外な歴史:かつては香港市場を席巻
台湾の白茶は、近年になって注目された印象があるが、実は1950〜60年代に香港市場で一世を風靡していた時代がある。
中国の福建・広東の白茶の輸出が不安定だった中、安定供給できる台湾白茶が市場に受け入れられ、1961年には香港市場のシェア77%、販売量は500トンを超えたという。
しかし、福建の輸出体制が整った1970年代後半から台湾白茶の需要は下がり、80年代には市場から姿を消すこととなる。
それから数十年を経た2010年代、中国白茶の健康効果が注目されると、台湾でも再び白茶への関心が高まった。気候や品種の違いを活かし、高山白茶、冬片白茶、紅玉白茶、そしてウンカに刺された茶葉を使う「蜜香白茶」など、個性豊かな台湾オリジナルの白茶が登場している。
革新の製法「橙茶」──白茶×東方美人のような香りの融合
2024年、台湾の茶業改良場から発表されたのが、新しい製法「橙茶(チェンチャ)」だ。
白茶のやさしさに、東方美人茶のような蜜香を重ねた、新ジャンルとも言えるお茶である。
萎凋(いちょう:しおらせる工程)を48時間と長く取り、軽く釜炒りし、じっくり自然乾燥させることで、芳醇な香りと安定した味わいを両立。新北の三峡では「白美人茶」、桃園の龍潭では「雪美人茶」としてそれぞれ親しまれている。
特に三峡の「白美人」は、地元の品種・青心柑仔を使い、ウンカの影響で香り高く、バラやライチ、桃、バナナ、熟した梅、さらには蔗糖や蜂蜜のような甘い香りまで重なる豊かな風味が特徴。
茶湯はとろみがあり、澄んだ橙紅色。口当たりは滑らかで、余韻も長い。
白茶の作り方は「少ない加工、豊かな表現」
白茶は、中国六大茶類の中で最も加工工程が少ないお茶と言われている。
茶葉を摘んだあとは、萎凋(しおれさせ)し、自然乾燥するのみ。揉捻や殺青といった工程は行わない。だからこそ、素材そのものの質と、萎凋の技術が白茶の品質を左右する。
茶葉は40時間以上かけて萎凋されることも多く、細胞内の酵素反応によってタンパク質はアミノ酸に、でんぷんは糖に変化。これが、白茶特有の「苦くないのに深みがある」「甘くて爽やか」な味を作り出している。
特に台湾では、烏龍茶に用いられる「浪菁(ろうせい)」や「萎凋」の工程をアレンジし、より香り高い白茶が作られており、生産者の経験と消費者の好みが反映された独自の白茶文化が育まれている。
台湾白茶の産地と主な品種
台湾各地で白茶は作られているが、特に有名なのは以下の地域:
新北・三峡:青心柑仔を用いた白茶の名産地。コンテストも開かれるほど。
南投県:紅玉(台茶18号)を使った白茶が多く見られる。
桃園・新竹・苗栗:東方美人の産地。蜜香白茶も人気。
高級志向の富裕層向けには、台湾山茶の野生種を用いた自然派白茶も。

台湾では、ほとんどの白茶が「白牡丹」グレードに相当する。これは主に一心二葉で摘まれ、碧螺春や東方美人とも似た収穫法で、収益や効率の面でも農家にとってバランスの良いスタイルとされている。
おいしい淹れ方:手軽さこそ白茶の魅力
白茶の茶葉は繊細で、枯れ葉のように壊れやすい。そのため、口の広い茶碗や蓋碗でふんわりと淹れるのが理想。
お湯の温度は80〜85°C、蒸らし時間は1分半〜2分程度から。
しかし、白茶は渋みが出にくく、何度でもお湯を注いで楽しめる。
忙しい日常の中でも、マグカップひとつで淹れられるという手軽さも、白茶の静かな人気を支えている。
白茶の魅力は「変化」と「余白」
白茶は、時間とともに変化するお茶。
収穫の年、保存期間、淹れ方、そして飲む人の体調や気分によって、毎回異なる顔を見せてくれる。
そんな「余白」が、白茶の一番の贅沢かもしれない。
台湾の土地が育む、やさしく、奥深い白茶。
あなたの毎日に、ひとときの静けさを運んでくれるかもしれない。

【月1の台湾茶通信】「ちょっと台湾」2025年9月号、応募受付開始!

・台湾茶|三峡青心柑仔種白茶
台北西側、三峡の山あいで育った青心柑仔種を秋に仕上げた白茶。ふわりとやさしい味わいが、季節の移ろいにそっと寄り添う。無農薬栽培で安心。残暑が残る九月には、冷たく爽やかに、あるいは温かくやさしく。
産地:新北・三峡
生産者:天芳茶行 製茶師黃耀寬

・茶菓子|桂圓核桃糕
茶に寄り添うのは、桂圓(乾燥龍眼リュウガン)とクルミで作ったシンプルなナチュラル菓子・桂圓核桃糕。どちらも体を温める食材として知られ、秋から冬にかけての養生にもぴったり。素朴でありながら、滋味深い甘さがゆっくりと広がる。季節の変わり目に、静かな癒しを添えるひとくち。
メーカー:義美食品股份有限公司
成分:水飴、クルミ、桂圓、きび砂糖、はちみつ、コーンスターチ、寒天、オブラート

ちょっと台湾|セット内容
A.今月の台湾茶(3回分)+月刊誌 NT$270
B.今月の台湾茶(1回分)+茶菓子(1回分)+月刊誌 NT$270
C.今月の台湾茶(3回分)+茶菓子(3回分)+月刊誌 NT$370
※単品購入・定期購入の選択可
■すべて税込・送料込
■今月号の月刊誌付き(台湾茶紹介、産地のストーリー、豆知識やレシピ、淹れ方動画QRコード、台湾音楽プレイリストなどが掲載)
★応募締め切り:8月20日まで
★期間・数量限定(先着100セット)
★8/31までに発送、9月上旬に日本のおうちに届く予定
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