【2025年6月号】台湾高山茶の原点から──阿里山金萱と塩味方塊酥、嘉義のごほうび時間
- Pin-chun Lin
- 4 日前
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台湾茶園の開墾と拡張は、主に北部から中南部へと進展しました。
初期の茶園は、主に中低地の丘陵地や山岳地帯に分布していましたが、1970年代中期以降、茶園の開発はより高い標高へと進み、「高山茶」という新しい茶葉の種類が次第に発展しました。
高山茶の誕生とその特徴
台湾の茶園は、当初は中低海抜の丘陵や山間部に広がっていましたが、1960年代から70年代にかけて開発が進み、次第に中南部や東部の高地へと拡大しました。1970年代中頃になると、標高1,000メートルを超える山岳地帯にも茶園が拓かれ、そこで生産される半球形または球形の包種茶(現在の烏龍茶)は、やがて「高山茶」という新たなカテゴリーとして確立されます。
高山特有の冷涼な気候や、朝夕に立ちこめる霧、短い日照時間といった環境条件は、茶葉に含まれるカテキン類などの苦渋成分を抑える一方で、テアニンや可溶性窒素といった甘味や旨味に寄与する成分の含量を高めます。こうして育った高山茶の芽葉は柔らかく、葉肉が厚く、ペクチン質を豊富に含みます。
その外観は鮮やかな翠緑色を呈し、口当たりはまろやかで滑らか。香りは淡く上品で、清らかな風味が特徴です。こうした魅力により、高山茶は従来の中焙煎を施した凍頂烏龍茶に代わり、無焙煎または極軽焙煎のスタイルで仕上げられるようになり、台湾烏龍茶の新たな中心的存在へと成長しました。。

高山茶の発祥地、嘉義県阿里山地方
嘉義県阿里山周辺の梅山地区龍眼林茶区は、台湾高山茶の発展の発源地と認識されています。高山茶の主要産地は、中央山脈、阿里山山脈、玉山山脈、雪山山脈、そして台東山脈などに分布しています。高山茶の産地には、桃園市復興区、新竹県五峰郷および尖石郷、苗栗県泰安郷および南庄薬、台中市和平区、南投県の仁愛郷、信義郷、竹山鎮および鹿谷郷、雲林県古坑郷、嘉義県梅山郷、竹崎郷、番路郷および阿里山郷などが含まれます。現在、全国の高山茶の栽培面積は6,663ヘクタールで、全国の茶栽培面積(12,251ヘクタール)の54%以上を占めています。

北回帰線が通る嘉義が、標高約1,600メートルの山が沢山あり、茶樹栽培に最適な環境を有する。1970年代に最初の青心烏龍茶樹が植えられ、高山茶栽培の先駆けとなった。1980年代には軽発酵の清香型球形烏龍茶として高山茶のスタイルを確立し、多くの優れた製茶師を育成した。より標高の高い「高冷茶」と比べると、阿里山茶は葉の成熟度と発酵度が高く、味わいも濃厚。2019年、県政府によって「高山茶都」として再ブランディングされ、再び阿里山が高山茶の故郷として位置づけられた。また、小葉種紅茶も作られ、コンテストも毎年行われる。

「金萱」という品種
台湾では、品種改良された茶樹が多く栽培されており、これらの品種には名前だけでなく、識別用の番号も付けられています。たとえば、よく知られている「金萱」は台茶12号、「紅玉」は台茶18号という番号で登録されています。
一方で、品種改良されていない茶樹もあり、代表的なものに「青心烏龍」や「四季春」などがあります。これらは中国から持ち込まれた茶樹、またはそれらから自然に現れた変異種を挿し木によって繁殖させ、特性を安定的に保っているものです。茶葉の風味を最大限に引き出すため、台湾では茶樹の繁殖に種子ではなく、遺伝的に同一の個体を得る挿し木が一般的に用いられています。台湾で生産されるお茶の80%以上が烏龍茶とされており、烏龍茶の製造に適した中国種の茶樹が広く栽培されています。
中でも「台茶12号 金萱」は、臺農8號と硬枝紅心を交配して生まれた品種で、1938年に研究が始まり、1981年に正式に発表されました。生命力が強く収量も多いため、包種茶・高山茶・紅茶など、さまざまな製法にも適しており、現在台湾で最も多く栽培されている品種です。
金萱を烏龍茶として仕上げた際によく言われるのが「ミルキーな香り」。ただ、私の感覚では「ミルキー」というよりも、「生クリームのような香り」が近いと感じています。ぜひ皆さんもお試しいただき、ご自身の印象を教えていただけたら嬉しいです。

高山茶の製法
茶摘み → 日光萎凋 → 室内静置萎凋+撹拌→ 炒菁→ 揉捻 → 初乾 → 團揉 → 乾燥
清香型球形烏龍茶である高山茶は、文山包種茶と共通する製法を持ちつつ、凍頂烏龍茶の製造技術から発展した團揉(丸め)の工程を取り入れているのが特徴。製茶工程の中でも文山包種茶と同じように特に萎凋と浪菁の工程が特に重視されており、これにより花のような香りが引き出される。文山包種茶の繊細な香りと軽やかな味わいを活かしながら、團揉によって外観は丸く引き締まり、香り高く美しい球形烏龍茶が仕上がる。
今回ご紹介する阿里山の金萱茶は、台湾高山茶の原点ともいえる嘉義県梅山郷で育まれた一品です。
標高1,200メートルという、阿里山茶区らしい適度な高地で栽培されており、近年人気の標高2,000メートルを超える梨山や大禹嶺といった『超高山茶』とは、また異なる魅力を持っています。
阿里山産の金萱茶は、発酵度がややしっかりめで、茶葉自体の成熟度も高いのが特徴。
標高がさらに高い地域の茶葉にみられる清涼感や軽やかさとは異なり、クラシックな高山茶らしい厚みのある味わいが楽しめます。近年では、発酵度をほどよく引き上げ、金萱という品種ならではのクリーミーでまろやかな香りを引き出すスタイルも再評価されつつあります。
ぜひ、原点に立ち返ったような、クラシックな阿里山高山茶の味わいをご堪能ください。

【月1の台湾茶通信】「ちょっと台湾」2025年6月号、応募受付開始!
・台湾茶|阿里山茶区、梅山郷の金萱茶
台湾高山茶の発祥地・阿里山茶区の梅山郷で育まれた金萱茶。花のようにやさしく香り立ち、金萱品種ならではのクリーミーな風味が豊かに広がります。自然に生まれるミルキーな香りとまろやかな味わいは、まさに台湾高山茶が本来持つべき味。その奥深さとやさしさを、ぜひ一杯で感じてみてください。
・茶菓子|方塊酥
阿里山のある嘉義県の定番スイーツ「方塊酥(ファンクアイスー)」。中でも塩卵入りの塩味タイプは、金萱茶のやさしいミルキーな香りを引き立ててくれる、絶妙な組み合わせです。



ちょっと台湾|セット内容
A.今月の台湾茶(3回分)+月刊誌 NT$270
B.今月の台湾茶(1回分)+茶菓子(1回分)+月刊誌 NT$270
C.今月の台湾茶(3回分)+茶菓子(3回分)+月刊誌 NT$370
※単品購入・定期購入の選択可
■すべて税込・送料込
■今月号の月刊誌付き(台湾茶紹介、産地のストーリー、豆知識やレシピ、淹れ方動画QRコード、台湾音楽プレイリストなどが掲載)
★応募締め切り:5月20日まで
★期間・数量限定(先着100セット)
★5/31までに発送、6月上旬に日本のおうちに届く予定
応募専用ページ:
高山茶のふるさと・阿里山で育った金萱茶と、地元で愛される塩味方塊酥。
花の香りとミルキーな風味、そしてほのかな塩味が織りなす、嘉義県ならではの味わい。
頑張った日のご褒美に、心ほぐれる台湾のティータイムはいかがですか?
応募専用ページ:
書籍《解茶:高山茶都職人精神》
嘉義県こそが台湾高山茶の発祥地であるという事実を再び広く認識してもらおうと、嘉義県政府は近年、阿里山茶のブランディングに力を注いでいます。2019年からは「高山茶都」という新たなコンセプトを掲げ、阿里山茶の魅力を再定義。2024年末には、台湾の人気カルチャー誌『Verse』と共同で、書籍《解茶:高山茶都職人精神》を出版しました。

この書籍では、阿里山茶の歴史や高山茶の成り立ちを丁寧に紹介しており、各地の代表的な製茶師のインタビューも収録。品種や製法の解説だけでなく、専門家によるテイスティング方法や淹れ方、阿里山周辺の観光情報まで網羅されています。
紙の書籍は一部書店のみでの取り扱いですが、デジタル版は無料で公開されており、どなたでも閲覧・ダウンロードが可能です。中国語にはなりますが、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。こちらのリンクからどうぞ↓
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