【2025年7月号】松柏長青茶──花香と歴史が薫る、台湾・名間の茶どころへ
- Pin-chun Lin
- 6月9日
- 読了時間: 6分

南投県名間郷、松柏嶺。茶どころとして知られるこの土地に、ひときわ誇り高き銘茶がある、「松柏長青茶」。
1975年、当時の行政院長・蔣経国氏が松柏嶺を視察した際、その茶の香味に深く感動し「松柏長青茶」と命名したことから、この名茶の物語は始まる。
台地に霧が舞う、茶の理想郷
松柏嶺は標高200〜430mに位置する緩やかな台地で、八卦山脈の南端にあたる。赤土の肥沃な地質、日照に恵まれながらも霧が頻繁に立ち込める独特の気候は、香り高くバランスの取れた茶葉を育てるのに最適な環境だ。年間を通して安定した気温が保たれ、1年に何度も収穫可能な品種の栽培に適している。

「六季春」とも称される茶畑の恵み——台湾を代表する高収量品種〈四季春〉
松柏嶺の茶葉の主役は、なんといっても「四季春」。
台湾中部・南投県名間郷。ここには、一年を通じて茶の香りが絶えない広大な茶園地帯が広がる。この地を代表する茶の一つが、香り高く生産量も豊富な「四季春」だ。

1985年、台北市の木柵茶区で茶農・張文輝氏が、武夷種と青心烏龍あるいは青心大冇との自然交雑から選抜・育成したのが四季春の始まり。その後、南投県名間郷の茶農・李彩云氏が苗を導入し、この地での栽培に適していることを見出した。豊かな収穫量と爽やかな香気に魅了された地元の茶農たちによって広く普及し、「四季春」と命名された。
この品種は、小葉種の早生タイプで、休眠期が短く、栽培サイクルが非常に早いのが特徴。適切に管理された茶園では年間最大6回もの収穫が可能であることから、「六季春」という愛称でも親しまれている。特に名間郷では、機械化が進んだ茶園管理によって、この高い収穫性が存分に活かされている。病虫害にも強いため、機械収穫にも適している。葉色は淡い緑で、生育力も旺盛。製茶時には、花のように華やかな香りを引き出すために軽発酵で清香型の球形烏龍茶に仕上げられることが多い。

このような特性から、四季春は包種茶だけでなく、冷泡茶や飲料用茶にも適しており、今や台湾のドリンク文化を支える基幹品種の一つとなっている。実際、タピオカミルクティーで知られる「手搖飲店」では、四季春をベースにした多様なドリンクが開発され、暑い台湾の夏に涼やかなひとときを届けている。
現在では名間郷全体で約2,004ヘクタールもの茶園が広がり、これは台湾全体の茶園面積(約6,400ヘクタール)の約3分の1にあたる。中でも四季春は名間郷における主力品種であり、全茶園の7割以上を占めるほど圧倒的な存在感を持つ。
四季春は、軽発酵・無焙煎の「清香型」に仕立てられることが多く、茶葉は緑がかった球状に丸められる。その香りは清々しく、ジャスミン、ジンジャーリリー、クチナシのような白く、透明感ある花香が特徴。特に冷めた後に香りが一層高くなり、また水出しでも香りが高いため、最近ではボトルティーやティーカクテルの素材としても重宝されている。

「茶のまち」を歩く
松柏嶺のふもとには「茶街」と呼ばれる商店街が広がっている。茶葉はもちろん、茶苗や製茶機具、茶油や茶菓子といった副産品まで取り扱う多彩な専門店が並ぶ。
なかでも注目なのが「前店後廠(チェンディエンホウチャン)」と呼ばれる、店舗の奥に製茶工場を備えたスタイル。工場見学や試飲も気軽にできるため、お気に入りの一杯に出会うまで、じっくりと店を巡る楽しみがある。


今回の松柏長青四季春茶は、いつもの連さんにまたお願いした。
南投県青農會長(若手農家クラブ)の会長を長年勤めている連さんは、四季春茶と紅烏龍の達人。いつも安定した味を提供し、とても安心して購入できる。
軽発酵の四季春茶は、毎年の天候や茶の木の状況により毎回の製茶に少し味の違いが生じるのですが、いつも違う日に作った茶葉のサンプルを送っていただき、去年の物と比べてテイスティングしてから買わせてもらっている。
今回も、発酵度のちょうど良い、花の香りが強く感じる四季春を選んだので、是非皆さんと一緒に飲みたいです。

茶文化を体感──松柏嶺遊客中心
旅の途中で立ち寄りたいのが「松柏嶺遊客中心」。2021年にリニューアルされたこの施設は、台湾茶文化をテーマにした展示空間を備えており、茶樹の品種、製茶の工程、歴史や器具の紹介など、視覚・聴覚・嗅覚を刺激する多彩な演出が魅力だ。
巨大な茶葉球のモニュメント、茶香を使った香り体験、古式茶房を再現した展示など、五感で「松柏長青茶」を味わえる空間は、まさにこの土地の象徴といえる。
住所:名松路二段181號

【暑い日にぴったり、四季春を使った人気レシピ】
雙柚四季春(ダブルシトラス・シキシュンティー)
材料(700cc)
四季春茶湯:200cc
はちみつ入り柚子茶:40g
果糖:25cc
グレープフルーツ果肉:50g
作り方
グレープフルーツの果肉をカップに入れる。
シェイカーに四季春茶湯、柚子茶、果糖を入れてよく混ぜる。
氷を加えてさらにシェイクし、グラスに注げば完成。
花の香りと柑橘の酸味が重なり合い、夏にぴったりの爽やかドリンクが楽しめます。
【月1の台湾茶通信】「ちょっと台湾」2025年6月号、応募受付開始!

・台湾茶|松柏長青四季春茶
松柏長青茶とは、南投県名間郷・松柏嶺地区で生産される四季春烏龍茶。香り高く、風味は清らかでまろやか、茶湯は黄金色に澄み、ジャスミンやジンジャーリリーを思わせる華やかな香りと爽やかな甘みが特徴。1975年に故・元総統 蔣経国氏がこのお茶を賞賛し、「松柏長青(松や柏のように常に青々と)」という名が付けられ、四季を通じて力強く生きる生命力の象徴とされています。
・茶菓子|花生糕
花生糕は、台湾産のピーナッツを丁寧に挽いて粉にし、香ばしさを引き出した一品です。口当たりはやわらかくもっちりとしており、香り高いピーナッツの風味が広がります。甘さは控えめで、歯にくっつきにくく、素朴で優しい味わいが魅力です。


ちょっと台湾|セット内容
A.今月の台湾茶(3回分)+月刊誌 NT$270
B.今月の台湾茶(1回分)+茶菓子(1回分)+月刊誌 NT$270
C.今月の台湾茶(3回分)+茶菓子(3回分)+月刊誌 NT$370
※単品購入・定期購入の選択可
■すべて税込・送料込
■今月号の月刊誌付き(台湾茶紹介、産地のストーリー、豆知識やレシピ、淹れ方動画QRコード、台湾音楽プレイリストなどが掲載)
★応募締め切り:6月20日まで
★期間・数量限定(先着100セット)
★6/30までに発送、7月上旬に日本のおうちに届く予定
応募専用ページ:
松柏嶺で、茶と生きる時間を
単なる農産物ではない。
ここには、気候・地形・人の手・文化が幾重にも重なった、豊かな“時間”が詰まっている。
高品質でありながら庶民的、そして台湾の日常を支えるお茶――松柏長青茶。
その一杯には、名間の風土と人の知恵、そして暮らしの豊かさが凝縮されている。
応募専用ページ:
【関連商品】
多めに水出しを作りたい場合は、単品の四季春もおすすめ
花のような、香り高い台湾茶がお好きな方は、是非コンテスト茶級文山包種茶を!
同じく連さんが作ったこう烏龍。四季春と紅烏龍は、私の暮らしの中では欠かせない存在になった。季節問わず、手頃な値段で毎日気軽に飲める四季春と紅烏龍。
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