【2025年10月号】三峡黄茶と金棗雪花餅
- Pin-chun Lin
- 9月3日
- 読了時間: 7分
今年の夏、日本は本当に異常なくらい暑かったですね。台湾の方が涼しいと言われるほどで、でも10月になればさすがに日本も秋らしくなるはず。そんな涼しくなりつつある季節にぴったりのお茶を探していたら、なんと台湾産の黄茶に出会いました。

黄茶といえば中国の君山銀針などが有名ですが、台湾では中国茶好きのためにごく限られた量しか作られていません。使われているのは三峡の在来種「青心柑仔」。柑橘の葉を思わせる香りを持ち、碧螺春らしい緑豆やバター香を残しながら、ウンカの噛み跡による蜜香、さらに発酵から生まれるパッションフルーツや焼き芋のような甘さが重なります。
青心柑仔は成長がとても早く、一度茶摘みをしたら10日〜2週間でまた新芽を出すほど。
けれど芽の数は金萱などの改良新品種ほど多くないので、ほとんどが手摘みです。
成長が早い分、農薬を使うと茶葉に残留し、代謝に時間がかかるため、次の収穫(2週間以内)には農薬が抜けきらず検査に通りません。結果として農薬を使えず、自然と無農薬栽培になってきました。
土地と品種の特性が重なって、環境にやさしい茶畑が育まれてきたことが、とても不思議で面白いところです。ただし一度のロットでできるのは10キロほど、本当に希少なお茶です。

黄茶の製法は緑茶に似ていますが、炒った茶葉を積み上げて蒸らす「悶黄」という工程が入り、茶葉が黄色みを帯び、香りに厚みが生まれます。ただこの工程は非常に繊細で時間もかかるため、生産量は限られており、台湾でもなかなか出会えません。
そして台湾では、中国からの茶葉輸入がプーアルなどの餅茶を除いて禁止されているため、実は私自身、中国の黄茶をあまり飲んだことがありません。台湾で黄茶を作っている人もごくわずかなので、この三峡黄茶が中国黄茶と同じ系統なのか、台湾黄茶の代表的な味になるのかは正直分かりません。ただ実際に飲んでみると、碧螺春に感じられる緑豆の風味が残りながら、萎凋や悶黄の工程でパッションフルーツや焼き芋のようなフルーティーさが加わり、さらに今回は春に作られた無農薬のロットだったため、ウンカに噛まれた茶葉から東方美人のような蜂蜜香まで感じられました。
軽発酵の清香型烏龍茶(文山包種や高山茶)のように「撹拌」がないため花香は出ませんが、その分フルーティーさと甘みが引き立ち、余韻まで心地よく広がります。

見た目が似ていてよく混同される台湾茶を、左から右の順に並べて紹介します。まず前提として、台湾茶づくりでは「新芽を摘めば甘い香りや味わいが生まれ、成熟葉を摘めば花香が引き立つ」という原則を覚えておくと理解しやすいでしょう。
左から右:
① 三峡碧螺春緑茶青心柑仔種を用い、白毫が多く、その他の部分は鮮やかな緑色を帯びる。花香よりも甘みを重視した味わい。
② 三峡黄茶同じく青心柑仔種を使うが、緑茶ほど鮮緑ではなく、悶黄の工程によって黄みを帯びる。こちらも花香より甘みを大切にした仕上がり。
③ 坪林文山包種茶品種は青心烏龍で、白毫はそれほど多くない。花香を立たせるために成熟葉を摘み、大きめの葉を使うのが特徴。
④ 新竹東方美人茶青心大冇種を用い、白毫が豊富。花香より甘みを優先するため、できるだけ白毫を含む新芽を多く摘む。萎凋・攪拌・静置回潤などの工程で発酵が進み、葉の成熟度によって異なる発酵度が現れ、多彩な色合いを見せることから「五色茶」とも呼ばれる。

超レアなため、今回も数量限定でのご案内となります。
【月1の台湾茶通信】「ちょっと台湾」2025年10月号、応募受付開始!

・台湾茶|三峡黄茶
ほとんど中国でしか作られていない黄茶を、台北近郊の三峡エリアの在来種「青心柑仔」を用い、碧螺春由来の緑豆やバター香に、ウンカによる蜜香や発酵で生まれるパッションフルーツや焼き芋の香りが重なる。無農薬栽培で、1ロット10キロのみの超希少品。
産地:新北・三峡
生産者:天芳茶行 製茶師黃耀寬

・茶菓子|金棗雪花餅
宜蘭名産の長実金柑「金棗」を使った雪花餅。金棗は皮ごと食べられる楕円形の金柑で、宜蘭の礁溪郷が代表的な産地。昔から塩や砂糖で漬け、喉に良い保存食として利用されてきた。雪花餅はマシュマロやナッツをクラッカーで固めた台湾菓子で、ここではクランベリーの代わりに金棗を加えることで、爽やかなフルーティーさが引き立つ。
メーカー:蘭田穀王股份有限公司
成分:ビスケット、砂糖、水、粉ミルク、乳糖、金柑、アーモンドスライス、無水バター、オレンジピール、メレンゲパウダー、シロップ、塩

ちょっと台湾|セット内容
A.今月の台湾茶(3回分)+月刊誌 NT$270
B.今月の台湾茶(1回分)+茶菓子(1回分)+月刊誌 NT$270
C.今月の台湾茶(3回分)+茶菓子(3回分)+月刊誌 NT$370
※単品購入・定期購入の選択可
■すべて税込・送料込
■今月号の月刊誌付き(台湾茶紹介、産地のストーリー、豆知識やレシピ、淹れ方動画QRコード、台湾音楽プレイリストなどが掲載)
★応募締め切り:9月20日まで
★期間・数量限定(先着100セット)
★9/30までに発送、10月上旬に日本のおうちに届く予定
応募専用ページ:
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【2025春新茶・有機認証茶】
最後に、重要なお知らせです。
グラフィック社は、書籍『台湾茶の教科書 現地のエキスパートが教える本場の知識』を、2025年9月10日に発売いたします。

皆様のおかげで、5年間続けてきた台湾茶通信「ちょっと台湾」が、このたび書籍化されました!👏
これまでバラバラにお届けしてきた内容を一冊にまとめ、辞書や教科書のように台湾茶の全体像をつかんでいただける本を目指し、精一杯編集しました。
提案から企画、編集、校正、デザインさらにPRまで、全てを担当してくださった類人猿舎の長嶺さん、グラフィック社の津田社長、編集部の和久様に心より感謝申し上げます。そして長嶺さんをご紹介くださったブッダベリーズ クッキングスクール東京の亜裕子先生にも大感謝です。
また、茶業改良場、茶葉学会、各地の製茶師、取材先の先生方にも深く感謝しています。皆さんにたくさん助けていただいたからこそ、この本が生まれました。
そして、皆様が台湾茶通信を購読してくれたこそ、この内容を積み重ねることができ、ついに書籍化が実現しました。
一枚の葉から、台湾茶の旅をしてみませんか?
台湾茶の産地を取材し続け、情報収集を重ねる著者が、現地のエキスパートならではの知識を惜しげもなく詰め込んだ一冊。
基礎知識を始め、台湾茶15種類(台湾緑茶・文山包種茶・高山茶・凍頂烏龍茶・鉄観音茶・紅烏龍茶・東方美人茶・小葉種紅茶・大葉種紅茶・台湾白茶・台湾山茶・蜜紅茶・客家酸柑茶・花茶・茶外茶)の産地、製法、歴史、おすすめのペアリングなどを写真とともに紹介。その他、必要な茶器、台湾茶の淹れ方、台湾茶に関する資格、気になる買い方など、読み物としても楽しめます。
これから台湾茶の世界へ踏み出す人から、すでにお茶を扱うプロまで、台湾茶を包括的に知るための決定版です。
◆台湾茶を種類別に詳しく紹介


◆コラムも充実

◆台湾茶に必要な茶器について

<目次>

<著者プロフィール>
林品君(リン ピンチュン)
台湾茶/台湾料理研究家。台湾宜蘭県生まれ。大阪大学外国語学部卒業後、大手旅行会社、レストランでの勤務を経て独立し、宜蘭にて台湾料理教室「郷菜 ShiangTsai」を主宰。「台湾料理は小籠包だけじゃない、台湾茶は凍頂烏龍茶と高山茶だけじゃない」をモットーに、台湾の食文化を海外に発信している。台湾茶については製茶師資格を持ち、農業部(日本の農水省に相当)による台湾茶コンテストの審査員課程を修めるほか、各産地の生産者への取材を重ね、最新のトレンドにも精通。近年はオンライン発信と通販にも力を入れ、「お家で、五感で楽しむ台湾」を提案し、日本にも多くのファンを持つ。

書名:台湾茶の教科書 現地のエキスパートが教える本場の知識
著者:林品君
発売日:2025年9月
仕様:A5判 並製 総160頁
定価:2,750円(10%税込)
ISBN:978-4-7661-4085-9
【書籍に関するお問い合わせ】
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